電気にまつわる話

ランプやロウソクを使って、たしかにそこに暮らしていた。。。

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納屋の中で

私の実家は築100年以上の古い日本家屋です。住居スペースは何度か手を入れて現代の生活に不便がない程度になっていて、天井が低く薄暗い造りでも電気をつければ問題ないし、どこからともなくすきま風が吹いてもエアコンとこたつが寒さから守ってくれるしトイレだって温水洗浄付きにしてるしで、まずまず問題なく暮らしていました。

ところがある夏の終わり、事件が起こりました。
台風で母屋に隣接する納屋の壁を補修していたトタンが吹き飛び、屋根の一部にも穴が。
納屋は住居とは違ってリフォームなし。取り壊さなければならないとわかっていながら、そのうちそのうち、と後回しにしていた建物です。飛んでいったトタンも30年ほど前に祖父が応急処置として取り付けたものだったらしいです。

来るべき時が来てしまった。

家族全員の気持ちが重くなりました。
納屋の取り壊し自体は業者さんに頼むしかないとわかっているのでいいんです。
しかし問題は納屋の中にぎっしりと詰め込まれている物たち。
農業を主にしていた曾祖父の時代に使っていたという鍬や鋤などの農具類をはじめ、古くなった家具、中身不明の行李。箱、缶。
おそらく置いておくスペースがあるから捨てなかっただけの、要するにガラクタの数々を処分しなければならない日がやって来てしまったんです。

やりたくはないけれど、取り壊しは急いでやらなければまた台風が来て今度は近隣のお宅に迷惑をかけてしまうかもしれない。
ガラクタを庭先まで運び出し、トラックで処理場へ持って行く作業は次の週末の二日間を使って決行されました。

父と兄が大きい物、重たい物の運び出しを、母と私は積み上げられた箱や缶の中身をチェックしてゴミの分別。
役割分担して気合い十分でとりかかりましたが、作業の妨げになる問題が発生したんです。

納屋、NO電気。

昔のままの納屋には電気をひいていなくて、入り口付近は外の明かりで物の判別ができるものの、奥の方は暗くてよく見えない。
見学担当の祖母が「昔使ってたランプがどこかにあるはず」と言いましたが、それがどこにあるのかがわからない。探しだせるわけもない。

結局、非常用の懐中電灯を梁からぶらさげて、とぼしい明かりの中で作業しました。
何十年も放置されてきたガラクタの片付けは予想以上にきつく、埃まみれで汗だくでうんざりでした。
でも同時に、電気のなかった時代にランプやロウソクを使ってたしかにそこに暮らしていた先祖の存在を思って感慨深かったです。

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